*前話*
『確認したいことがありますので、次回スタジオに来た際、黒田(くろだ)までお声がけいただけますか』
アプリに表示されたホットヨガ教室からのメッセージ。
黒田さん?って、あの男性の事務の人だっけ?
料金プランの変更やレンタル品の予約など、事務手続きはすべて専用のアプリで行うことになっていた。
ホットヨガ教室の事務員とは、そのアプリでのみ繋がっている。
そういえば、前に更衣室のロッカーの中でスマホをいじってたら、注意喚起の個人メッセージが送られてきたっけ。
でも、それからは一度も使っていない。
もう一度、黒田から来たメッセージを読んでみる。
・・・確認したいこと?
んー・・・契約のこととか?
確認したいという内容にピンと来なかったが、言われたとおり、次回行った時に声をかけることにした。
その数日後の仕事帰り。
夜に開講されているクラスに参加しようと、ホットヨガ教室を訪れていた。
仕事が早く終わり、少しだけ元気が有り余ってる日の日課。
私は、鼻歌まじりでホットヨガ教室へ続く階段をのぼっていた。
1ヶ月ほど前、私はここでオナニーをした。
更衣室のトイレでローターを入れてヨガクラスを受講し、その後シャワー室でイッたのだ。
でもそれ以来はやっていなかった。
というよりも、次はどこでやろうかばかりを考えていた。
ここでシャワーを浴びるたび、公共のトイレや、露天風呂で気持ちよくなっている自分を妄想していた。
ピッ
スマホ画面のQRを入り口にかざすと、自動ドアが開く。
いつも無人の受付に、今日は人がいた。
「あ!こんばんは〜!」
「いらっしゃいませ。こんばんは」
「あ、黒田さんですか?」
ネームプレートに書かれたクロダという文字が目に入る。
「はい。黒田です。
桜木(さくらぎ)さんは、今日、お時間大丈夫ですか?」
「はい。たしか確認したいことがあるんでしたっけ?」
「はい。今日はこれからヨガのクラスに参加しますよね?
それでしたら、お着替えが終わってからでいいですので、帰る直前にでもお声掛けいただけますか?
わたしはここにいると思いますので」
「あ、分かりました。
今日のラストのクラス、あと15分後ですよね。
ではまた帰りに声かけますね」
くるりと黒田に背を向け、いつも通り更衣室に向かう。
黒田さんって、あの人か。
ヨガクラスのインストラクターとはそれなりの面識はあるものの、事務の人とは最初の入会の時以来、直接は関わっていない。
たまに掃除している姿を見るくらいだ。
それでもあの黒田という人は、ニコニコと挨拶をしながら掃除をしている唯一言葉を交わす人物だった。
言葉を交わすと言っても、挨拶だけだけど。
『お疲れ様でした』
『頑張ってください』
『いかがでしたか?』
など、やたらと話しかけてくる人だったので随分面倒見がいい人だなぁと印象に残っていた。
今日初めて名前と顔が一致する。
平日のラストのクラスというのもあり、受講生は少なかった。
私は、平日の夜にここでヨガをするのが好きだった。
更衣室も広々と使えてストレスフリーだし、汗をかいた後は、今日も一日頑張った!と自分を褒めてあげたくなる。
お風呂代りのシャワーを浴びて、
お気に入りの香りのヘアオイルを髪に塗り、
ほてった体にミネラルウォータを与える。
そうすると、女子力が一気に上がった気がして嬉しくなるのだ。
続き
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