*前話*
帰る際、受付を見ると黒田がいた。
「黒田さん、今終わりました。
確認したいことってなんですか?」
「あ、お疲れ様でした。
ここではあれですから、事務所の方にご案内しますね」
受付カウンターの内側から、奥の事務所へ案内される。
初めて入る空間。
ふーん、バックヤードはこんな風になってたんだ。
キョロキョロと周りを見ながら、黒田の背中を追う。
「あぁ!お疲れ様でした〜!♪」
ちょうど、先ほど参加したヨガクラスのインストラクターが帰るところだったようだ。
「ありがとうございました。お疲れ様でした」
私と黒田に見送られ、事務所を出て行く。
「あちらにお座りください。
ちょっと準備してきますので、少しお待ちくださいね」
そこまで広くない事務所の部屋のもう一つ奥に、小さな部屋があった。
簡易的な椅子とテーブル。
壁の一部には書類が詰まった棚が並んでいる。
黒田が部屋から出て行き、一人取り残された私。
言われたとおり椅子に座り、荷物を隣の椅子の上に置く。
うーん、こんな奥の部屋にまで連れてこられて、確認したいことってなんだろう…?
・・・。
私、なんか悪いことやった?
・・・?
一瞬何かが頭をよぎりそうになった次の瞬間、
タブレット端末を持った黒田が部屋に戻ってきた。
「桜木さん、
今回呼ばれた理由に、何か身に覚えはありますか?」
後ろを見ずにドアを閉める黒田。
「えっ???
あ、いや、、、、」
ガチャンッと扉が閉まる音が部屋に鳴り響く。
身に覚え?
いや〜…何もないけど…
あれっ、、、
え?
まさか…?
いやいやいやいやありえない。
だって…
そんなわけ…
体から汗が噴き出していた。
じわりと脇の下が濡れているのを感じる。
長い沈黙をつくってしまった。
とにかく、自爆しないように、不自然にならないように…
「え?私、何か悪いことしましたか???
すみません、気づいてなくて…」
「・・・
桜木さん、
ここでイヤらしいことをしてましたよね?」
ドクンッッッ
そんなはずない。
バレるはずがない。
あの日、黒田のことは一度も見なかった。
もしかして、誰かがチクった?
でもいつ見られてた…?
とにかく、否定の言葉を…
「こちら、見ていただけますか?」
黙っている私の目の前に、再生ボタンが表示されたタブレットが現れる。
黒田が画面をタップすると、見憶えのある景色が動き出した。
自分の目が、見開いていくのが分かった。
続き
コメント