私と同期(1)








「えっ?!


荒木くんが???」











会社の同期は特別だ。







時間が経つほど、『ずっと大切にしたい』と思う存在になる。







研修のときも、


歓迎会のときも、


休みの日も、





辛い時も、


楽しい時も、





いつも変わらずに、味方で居てくれる存在。








私の同期は20人だった。



配属された技術系は、そのうちの10人。



その中でも女子は3人。




自ずと、男子と一緒に行動することが多くなっていた。






荒木とは、新入社員研修の最初のグループワークで一緒だったこともあり、特にしゃべりやすい存在になっていた。




同期との飲み会のときも、気づけば荒木と2人で盛り上がっていることも何度かあった。





いじられやすく、ムードメーカーのような存在だった荒木。







たまたま廊下ですれ違った隣の部署の同期から、荒木が辞めること、今は有給消化中で休んでいることを聞いた私。







『そっか〜…


同期で最初に辞めるの、荒木くんか〜…』






入社3年目の年のことだった。










その週の土曜日の昼。




「荒木くん!

辞めるの???

なんかあった?大丈夫?」




荒木に送ったメッセージ。




ストレートに聞きたいことを聞ける仲ということが、私の心により深く刺さる、荒木が辞めるという事実。






すぐに既読つき、返事が来る。







「え、もう伊藤のとこまで話いった?(笑)
早っっ(笑)」




「いや、そんなこと言ってる場合じゃないから(笑)!

でもよかった〜〜〜元気そうだね」





「いやいや!俺めっちゃ痩せたからねwww」



「え?!そうなの?!」



「まぁでも、最近酒ばっか飲んでまた太ってきたけどw」



「いや、どっち(笑)」



「だってさ〜〜〜まじ俺んとこの上司がさぁ!!!

ってか、今から部屋来れる?
愚痴りたいw」



「あ〜、うんいいよ!今いく!
でも手ぶらで行くからね!」




私は携帯をにぎりしめ、立ち上がっていた。










私も荒木も、社員寮に住んでいた。





1階が男子部屋。



2階は女子部屋。


2階に男子が来ることは禁止されていたが、なぜか1階に女子が行くことは禁止されていなかった。






ムードメーカー的存在だった荒木の部屋は、よく同期飲みの二次会で使われていた。



私もよく混ざって朝まで飲んでいた。






二次会以外の理由で、荒木の部屋に行くことになるとは。









ピンポーーーーーン




ドアが開き、赤い顔の荒木が顔をだす。





「うっす!来たか!」 


「えっ?!もう飲んでんの?!まだ昼間だよ(笑)」


「いいじゃん休日くらい昼間から飲んだってw

飲み物、今ビールしかない〜。いい?」



そういいながら、荒木は冷蔵庫からビールを出していた。



「ってか今会社休んでるんだよね?
毎日が休日じゃん(笑)

しかも別に痩せてなくない?(笑)


あ、失礼しま〜〜す」



ローテーブルの隣に座ると、目の前にトール缶のビールが置かれる。




「おい〜(笑)俺傷ついてるんだからさ〜

優しくして!!!」


「はいはい(笑)
で?何があったの?」


「俺んとこのマネージャー!まじパワハラ!」





私は膝を立てて抱えるように座り直すと、そこからはひたすら荒木の話を聞いていた。



ビールをちびちびと飲みながら、荒木と目が合うたび軽く頷く。




荒木は怒った口調で話しているが、時折、遠くを見つめるような悲しい表情になっていた。





『やっぱり、辛かったんだろうな…』







人事が決めた、たまたま配属された部署。



上司に自分の仕事を否定され、攻撃的な言葉を浴びせられる日々。


もし自分がそこに配属されていたら、私が辞めることになっていたかもしれないんだよな〜・・・




そう思うと、真剣に聞かざを得なかった。





一通り話終わった荒木が、目の前のビールを一気飲みする。




「…そうだったんだね…



部署移動じゃだめなの?

私のとこのマネージャーはいい人だよ」



「それは伊藤が女だからみんな優しいんだよ!(笑)

まぁでも、部署移動も考えたんだけどさ。
なんか、そもそもやりがいみたいなもんもなかったし。

転職するのにちょうどいいタイミングかな〜なんて思ってるんだよね。」


「そうなの?」


「うん。まっ、そういう運命だったってことだよ(笑)」


「…。
なんか、何も力になれずにごめんね。
たまたま配属された部署なのに…」



「いやいや!伊藤が謝ることないから!!
むしろ、話聞いてくれてありがと!来てくれてありがと!」



「ううん、話聞くことくらいしかできないし!」




「伊藤は相変わらず優しいな〜!

ぶっちゃけモテるっしょ?」






続く